特集・コラム

映画のとびら

2019年10月11日

クロール ―凶暴領域―|新作映画情報「映画のとびら」#030

#030
クロール ―凶暴領域―
2019年10月11日公開


(C) 2019 Paramount Pictures Corporation. All rights reserved.
クロール ―凶暴領域― レビュー
泳げ! ワニよりも速く!

 米フロリダ州を舞台に、床下に閉じ込められた父娘が巨大ワニの襲撃にさらされるパニック・アクション。『スパイダーマン』シリーズ(2001-2007)のサム・ライミがプロデュース、『ヒルズ・ハブ・アイズ』(2006)、『ミラーズ』(2008)の俊英アレクサンドル・アジャが監督に当たった。ホラー/サスペンス系作品で名を成した映画人ふたりのタッグ実現、それだけで映画ファンには心が躍るところ。

 カテゴリー5の最大級ハリケーンがフロリダ州を襲った。姉からの連絡で父親(バリー・ペッパー)と連絡が取れないことを知ったヘイリー(カヤ・スコデラリオ)は、地元警察の制止を振り切り、かつて家族が住んでいた家に向かう。果たして、荒らされた家屋の床下に父はいた。大けがを負って気絶している父に何が起こったのか。ヘイリーはやがて地下室にたまった水の中で父のけがの真相に気づくのだった。

 英語原題の「Crawl」には「ノロノロ腹ばう」「ウジャウジャいる」「ゾッとする」「クロール水泳」などの意味がある。それらから連想されるすべての要素が、そのまま飛び出してくる作品と考えていい。

 例によって「よせばいいのに……」と誰もが思うアブナイ状況へヒロインはどんどん突き進む。いかなる極限状況が展開するかがホラー/スリラーの定石。常識としてはアウトでも、娯楽映画としては正解な主人公とその父が閉じ込められる場所は、水であふれた地下室。気がつけば3~4m級のワニ群が周囲を取り囲み、水は喉元まで迫ってくる。さすが湿地帯の田舎町で、各家庭には床下に巨大な排水溝があるという設定。ハリケーンの大雨の影響でそこから野生のワニがガンガン入ってくるのだからたまらない。

 総じてアジャの演出に緩みは少なく、スピーディーなモンタージュで物語を前へ前へと突き進める。88分という短い上映尺が実に心地よい。また、流血を伴う場面もあるものの、残酷描写だけに溺れているわけではない。どちらかというと災害/動物パニックの趣で、サバイバル・アクションとしてもどこかスポーティーな痛快さがあったりする。景気よく足や腕に噛みついてくるワニもさることながら、なんといってもヒロインの設定が大学の競泳選手というのがミソ。映画の導入部でヒロインの練習風景が延々と描かれるのも、男性観客へのサービスカット=眼福のためではない。クライマックス近く、水浸しの街中に浮かぶ救命ボートを見つけて、父親が娘に叫ぶ。「お前なら泳げる。(ワニより)速く泳ぐことができる!」。そして、ヒロインは人生最大のレースに挑戦するのである。行きすぎた極限描写が笑いの領域に一歩踏み入ってしまう瞬間に、ライミ映画的興奮を覚える向きもいるだろう。本当の「凶暴領域」はここにあった。

 ちなみに、撮影が行われたのはセルビア共和国の首都ベオグラード。そのベオグラード動物園には第二次大戦時から飼育されている世界最高齢のワニがいる。その名前はアジャならぬ「ムジャ」であった。

原題:Crawl / 製作年:2019年 / 製作国:アメリカ / 上映時間:88分 / 配給:東和ピクチャーズ / 監督:アレクサンドル・アジャ / 出演:カヤ・スコデラリオ、バリー・ペッパー、モーフィド・クラーク、ロス・アンダーソン・チョチョ
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タイトル U.M.A レイク・プラシッド
(原題:Lake Placid)
製作年 1999年
製作国 アメリカ
上映時間 82分
監督 スティーヴ・マイナー
出演 ブリジット・フォンダ、ビル・プルマン、オリバー・プラット、ブレンダン・グリーソン、ベティ・ホワイト

下水道、湖、森、湿地帯……。ワニはどこにでもいる!?

 ワニをめぐるパニック・ホラーは昔からたびたび製作されてきた。

 巨大ワニものでは、やはりルイス・ティーグ監督、ロバート・フォスター主演の『アリゲーター』(1980)がすぐに思い浮かぶ。下水道に放棄されたペットのワニが謎の成長ホルモンによって巨大化、人を襲い始めるというもの。振り返ればもはや40年近く前に作られた「古典」なのだが、どうもニューヨーカーには下水道に怪物が潜んでいるという幻想があり、それを視覚化した動物ホラーとして一見の価値あり。

 巨大ワニという点では、スティーヴ・マイナー監督、ブリジット・フォンダ主演の『U.M.A レイク・プラシッド』(1999)は捨て置けない。メイン州の湖を舞台にしたこの作品では、およそ全長10mのワニが登場。気が利いたというか、どうしていいのかわからなくて呆然とするラストまで目が離せない。タイを舞台に6mのワニが飛び出すマイケル・マドセン主演『ラプター』(2007)なる作品もある。

 ヒット作品のエピゴーネン(亜流作品)をすぐに製作するイタリアには『キラー・クロコダイル』(1988)という題名そのままのパニック・ホラーがあった。放射性廃棄物で巨大化したという湿地帯のワニはもはや怪獣。その上、そんなに怖くもないというところに、今となっては愛嬌すら感じる一本。

 珍作といえば『カニング・キラー 殺戮の沼』(2007)という作品もある。不用意にアフリカの奥地に足を踏み入れたニューヨークのテレビクルーが内戦とワニの両方に巻き込まれて大変な目に遭うのだ。

 オーストラリアもワニの宝庫。実話を映画化したという『ブラック・ウォーター』(2007)はワニの登場こそ少ないが、取り残された人間の恐怖心で勝負した作品。『マンイーター』(2007)は湿地帯で巨大ワニが出てくるパニック・ホラーで、『アバター』(2009)主演直前のサム・ワーシントンが脇役で出演し、途中で見事にワニに食われている。また、オーストラリアでワニといえば、やはり『クロコダイル・ダンディー』(1986)を忘れてはいけない。ワニ革ベストを着てニューヨークを闊歩する明朗オージー自然児ポール・ホーガンの前には、どんな恐ろしいワニも形無しなのであった。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 

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