特集・コラム

映画のとびら

2021年11月4日

恋する寄生虫|映画のとびら #148【ポスタープレゼント】

#148
恋する寄生虫
2021年11月12日公開
★「恋する寄生虫」のポスターを抽選で2名さまにプレゼント!<応募受付終了>

©2021「恋する寄生虫」製作委員会
『恋する寄生虫』レビュー
「虫」が導く得も言われぬ恋の感触

 作家・三秋縋が2016年に上梓した同名小説を林遣都と小松菜奈の顔合わせで映画化したラブストーリー。潔癖症の青年と視線恐怖症の女子高生の恋模様を、独特の設定と感性の中に描いていく。監督はCM、ミュージックビデオの世界で活動を続ける一方、村上淳、光石研らが出演する『colors カラーズ』(2006)、窪塚洋介主演の『UGLY アグリー』(2011)などの長編映画も手がけている柿本ケンサク。

 高坂賢吾(林遣都)は幼少期から極度の潔癖症にさいなまれ、他人と接することができない。「汚れ」から逃れるため、部屋に閉じこもるような孤独な日々を送り、外出するときはコートにマスク、手袋を身につけるという完全装備。自分は世界から拒絶されている。世界など壊れてしまえ。そんな破滅願望を実行に移そうとしていたとき、ひとりの少女と出会う。彼女、佐薙(さなぎ)ひじり(小松菜奈)は、視線恐怖症に苦しんでいる女子高生だった。虫の研究者である祖父の瓜実(うりざね/石橋凌)が言うには、ひじりの頭の中には「虫」がいて、その虫が母の命も奪ったとのこと。虫の感染を恐れ、自然と人と距離をとるようになっていた彼女は、ある日、いきなりバス停で昏倒した高坂を見つけ、祖父のもとに運んだのだった。診察を受けた高坂は数日後、和泉(井浦新)と名乗る謎の男からひじりの面倒を見ることを頼まれる。理由はわからない。しかし、和泉に世界破滅の「計画」を知られた高坂は渋々、要求をのむことにする。不思議なことに、ひじりは高坂といると視線恐怖症がやわらいだ。一方の高坂も、ひじりと外出を重ねるごとに潔癖症が徐々に薄れていく。「リハビリ」を重ねたふたりの心はいつしか静かに接近していくのだった。

 典型的なボーイ・ミーツ・ガールの形式にSF/ファンタジーの趣向を絡めた作品、と感じる観客もいるだろうか。なぜなら、この作品世界では「虫」が科学者の世迷い言ではなく、具体的に生きものとして登場するからである。その「虫」が主人公たちの病気を引き起こし、恋愛にも関与する。恋愛に関してより運命的な匂いを発散させるあたり、「虫」は一種の「赤い糸」のような役割を担っている存在だというのか。正確な定義は示されない。だから、映画が始まってしばらくの間、その摩訶不思議な切り口に「どういうこと?」「何をやっているの?」と戸惑う向きもいるのではないだろうか。

 監督の柿本ケンサクは「虫」について「無意識の心」のメタファーであると報道向け資料において吐露している。これは心の物語である、と。「恋する寄生虫」とは「恋する心」。つまり、寓話なのだと。なるほど、得心のいく表現である。その構えで映画に接すればスッキリ楽しめるかもしれない。しかし、「虫」が「異物」として実体化しているからこそ、この作品の面白さがあることも紛れもない事実だったりする。

 まず「虫」は主人公たちを結びつけるきっかけであった。次に、恋の障害になった。「虫」がいなければ始まらなかった恋は、「虫」がいることで終わるかもしれないのである。そんな矛盾をはらんだ事態は、普遍的な恋の問題として、そのまま観客の「共感」につながっていないだろうか。恋愛自体がそもそも激しくSF/ファンタジー的であり、恐ろしいほどに現実的なのである。「虫」という理解を超えた「理屈」は物語の進行とともに、いつの間にか理屈でなくなっていく。絵空事のように思えたそれが、ピュアなラブストーリーとして鮮やかな輝きと実感を獲得していく醍醐味をどう記したらいいのだろう。

 林遣都と小松菜奈はコンプレックスを抱える男女を無理なくそこに存在させてお見事。カラフルかつユニークなヴィジュアル処理のもと、彼らを確かなゴールへと導いた演出の力も見逃すわけにはいかない。

 おそらく人はいろいろな意味で「虫」を抱えている。「虫」を体内に持っているから生きていける。一種の原罪と考える向きもあるだろう。観客ひとりひとりに「虫」を見つけ出す機会をこの映画は与えてくれる。それぞれの解釈を自由にぶつけつつ、得も言われぬ恋の感触にひたっていただきたい。

 11月12日(金)全国ロードショー
原題:恋する寄生虫 / 製作年:2021年 / 製作国:日本 / 上映時間:100分 / 配給:KADOKAWA / 監督:柿本ケンサク / 出演:林遣都、小松菜奈、井浦新、石橋凌
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<応募期間:
2021年11月4日(金)~24日(水)>

※当選者の発表はポスターの発送をもってかえさせていただきます。


 

あわせて観たい!おすすめ関連作品
破滅願望と林遣都と小松菜奈

 破滅願望を持つ少年と風変わりな少女との物語といえば、木村淳監督、岡本健一、石田ひかり主演の『あいつ』(1991)という佳作が思い出される。屈折した青春像を演じるひとりとして、映画デビュー間もない頃の浅野忠信が岡本の同級生役で出演。まだ幼い顔立ちながら、当時、男闘呼組の人気メンバーだった岡本を向こうに回して見せるその存在感は、公開から30年を経た現在でも新鮮だ。

 「地球なんか隕石が落ちて滅びてしまえ」と考えているのは、今年公開された映画『光を追いかけて』(2021)の主人公。彼(中川翼)と不登校女子中学生の関係を描く物語は、『恋する寄生虫』(2021)同様、奇妙な設定の中に普遍的な人間の感情が刻まれて心がうずく。ヒロイン役の長澤樹も可憐。

 林遣都も小松菜奈も、恋愛映画の佳作にいろいろ出演し、話題に事欠かない人気俳優だ。

 林遣都には、さえない高校生がボクシングを通して幼なじみの女の子(北乃きい)と恋をはぐくんでいく『ラブファイト』(2008)が初期作品にある。ちょっとダメな男という風情は『恋する寄生虫』に通じるもので、自分の意のままにならない妻(村川絵梨)に苛立つ男を演じた『花芯』(2015)も連想されるところ。『にがくてあまい』(2016)ではヒロイン・川口春奈を相手にゲイの菜食主義者を演じている。ゲイといえば、やはりテレビドラマ『おっさんずラブ』(2018)を「林遣都出演ロマンス映画」の頂点に推す女性ファンが多いかも知れない。『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』(2019)も製作されて、彼にとって大きな出世作となった。最近では、のんをヒロインに配したラブコメディー『私をくいとめて』(2020)でのサラリーマン役も新鮮であった。

 小松菜奈は映画デビューを飾った『乾き』(2014)と同じ年に、『近キョリ恋愛』(2014)に出演している。山下智久演じる教師に恋愛感情を抱くクールな女子高生役。『黒崎くんの言いなりになんてならない』(2016)ではドS男(中島健人)と優しい王子(千葉雄大)の間で揺れる地味な転校生役を演じている。同じく転校生を演じた『溺れるナイフ』(2016)では、破天荒な金持ち息子(菅田将暉)との情熱的な恋が描かれ、『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』(2016)にはパラレルワールド的要素の中で悲恋色が漂い、『坂道のアポロン』(2017)ではすれ違いの恋が切なく輝いた。大泉洋のファミレス店長に憧れる女子高生役『恋は雨上がりのように』(2018)も麗しいが、同じく恋心が報われないミュージシャン役『さよならくちびる』(2019)はそれ以上にみずみずしい。最近も『糸』(2020)、『ムーンライト・シャドウ』(2021)などがあり、恋愛映画の筆頭女優としてまだまだ注目を集めそうだ。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 

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