特集・コラム

映画のとびら

2022年1月5日

クライ・マッチョ|映画のとびら #159【ポスタープレゼント】

#159
クライ・マッチョ
2022年1月14日公開
★「クライ・マッチョ」のポスターを抽選で3名さまにプレゼント!

© 2021 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
『クライ・マッチョ』レビュー
旅を終えた男が向かうところ

 『恐怖のメロディ』(1971)での監督デビューから50年。91歳にして今も第一線で映画製作を続ける巨人クリント・イーストウッドの長編監督作品第40作は、自らを主演に描く詩情あふれる人間ドラマ。さえない老カウボーイが、友人の息子とともに、メキシコからテキサスへと逃れの旅を繰り広げていく。N・リチャード・ナッシュが1979年にシナリオとして書き上げ、後に小説にまでまとめた物語を『グラン・トリノ』(2008)、『運び屋』(2018)でもイーストウッドと組んでいる脚本家ニック・シェンクがブラッシュアップ。役が実年齢に見合ったことで、イーストウッドにとって満を持しての映画化となった。

 1979年のテキサス。かつてロデオ界のスターだったマイク・マイロ(クリント・イーストウッド)は、落馬事故以来、妻子を事故で失う悲運にも見舞われ、全くの孤独の身。今はかろうじて馬の調教師としてさえない日常を生きている。そんなある日、大きな牧場主でありマイクの元の雇い主でもあるロバート・ポルク(ドワイト・ヨーカム)が突如、来訪。別れた女房レタ(フェルナンダ・ウレホラ)とメキシコで暮らしているひとり息子のラフォ(エドゥアルド・ミネット)を連れ戻してきてほしいと頼まれる。放蕩(ほうとう)の限りを尽くしている母親とはいえ、彼女の許しもなく息子を連れてこいとは、誘拐同然の仕事。それでも、ロバートに大きな貸しがあるマイクは依頼を引き受け、一路、メキシコへ。レタの邸宅に寄ってみると、確かに彼女は「毒婦」であり、マイクを色仕掛けで仲間に引き込もうとさえする。ウンザリしたマイクは、闘鶏場を徘徊していたラフォを見つけるや、さっさと車に乗せてテキサスへ戻ろうとする。しかし、ラフォが連れ去られたと知ったレタは、すぐに追っ手を差し向けるのであった。

 題名にある「マッチョ」とは、直接的にはラフォが飼っている闘鶏の名を指す。直訳するなら「マッチョよ、鳴け!」といったところか。もちろん、文字どおりの男性的な「マッチョ」の意に解釈することも可能で、恐らくイーストウッドのファンほどそこに意味を重く込めるだろう。すなわち、エールとしての意味をはらんだ題名であり、長くタフガイ・スターとして君臨してきたスターへの勲章でもあるという考え方。男らしく生きるとはどういうことか。答えはここにある。もはやファンにとってイーストウッドは生きる哲学であり、物語の枠を超えて輝ける不朽のアウトローなのだ。マイクの一挙手一投足が「男(マッチョ)」のモデルであり、行動のすべてが過去の映画キャラクターに重なってしまう。ファンならそういう楽しみ方が第一となる。どうしようもない。実際、イーストウッドはそれに耐えうるりりしい男性像を見せている。

 物語自体を眺めるなら、ささやかなロードムービーといったところか。味わいの旅情感と言い換えてもよく、さらに煎じ詰めるなら「バディー(相棒)もの」である。マイクについていく13歳の少年ラフォは打算的に見えて、実は牧場生活に憧れる多感で真面目な少年。実直な上に馬のことにも詳しいマイクにやがて感化され、尊敬の眼差しを向けていく。一方、マイクもラフォに心を開き、ひとかたならぬ情愛を注ぐ。一種の「疑似父子」の構図であり、彼らの心の交流にほだされない観客はいないだろう。

 逃亡劇という側面でとらえるなら、序盤は型どおりといっていい。追いつ追われつのスリルがほどよくにじむ。だが、老練イーストウッドはそれをいつまでも続けなかった。「娯楽映画の図式」についにのせなかった。後半に差し掛かる前に、逃亡自体はいきなりブレーキ。朴訥(ぼくとつ)とした「ふれあいの時間」がいきなり始まる。少年ばかりか、メキシコの田舎町の人々とも見せる主人公の「地域交流」こそ、本作品の白眉といっていい。心優しいバーの未亡人との意気投合、暴れ馬を鮮やかにさとす調教場面などは、抒情の極みといえるだろうか。流行りのヒーロー映画よろしく、終盤へ向けての張り詰めたサスペンス、派手なアクションなどを期待する向きには、ある意味、あっけないほどにのどかすぎる「幕間(まくあい)」だろう。「そういう映画は昔、山ほど作った。もういいだろう」と、かすれた声が聞こえてきそうである。そう、91歳の老境を迎えた英雄的俳優にとって、「白熱の仕掛け」よりも「旅の人情」が心の本音だった。

 もちろん、逃亡劇のケリはつく。それも驚くほどあっけなく。そのあっさり感がまたいい。旅を終えた男はどこへ行くのか。決まっている。だから、うれしい。なんと軽やかなダンスが最後に待っていることか。

 「人は自分をマッチョに見せたがる。バカげている」

 終盤で飛び出す台詞に背筋が伸びる向きも多いのではないか。気勢じゃない。腕力でもない。心こそ健やかなるマッチョであれ、ということか。それを体現してきた男が演じるがゆえの説得力でもある。

 ここのところ、実話や偉人ものの映画化に熱心だったイーストウッドとしては、思い切りフィクションの世界に舵を切った映画でもある。彼ならではの「ウソ」に透けて見える「真実」はたまらなく魅力的だ。

 1月14日(金)全国ロードショー
原題:Cry Macho / 製作年:2021年 / 製作国:アメリカ / 上映時間:104分 / 配給:ワーナー・ブラザース映画 / 監督:クリント・イーストウッド / 出演:クリント・イーストウッド、エドゥアルド・ミネット、ナタリア・トラヴェン、ドワイト・ヨーカム、フェルナンダ・ウレホラ
公式サイトはこちら
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『クライ・マッチョ』をめぐるイーストウッド

 クリント・イーストウッドと馬芸といえば主演作品『ブロンコ・ビリー』(1980)が思い出される。監督第7作目でもある。旅回りの「西部劇ショーマン」の姿に、『クライ・マッチョ』(2021)の主人公の若かりし日を重ねて見るのも一興かも。

 イーストウッドは馬以外にも動物との共演が印象深い人。オランウータンと共演した『ダーティファイター』(1978)と『ダーティファイター 燃えよ鉄拳』(1980)の2作品は腕っぷしの強いトラック野郎の物語。相棒役のオランウータン、クライドは『クライ・マッチョ』のニワトリに負けない名演技。監督はそれぞれ、イーストウッド組の常連スタッフ、ジェームズ・ファーゴとバディ・ヴァン・ホーン。

 カウボーイ・ハットが似合うということでは、『クライ・マッチョ』の主人公はまさにイーストウッドそのもの。文字どおり、カウボーイのイーストウッドといえば、古くはテレビシリーズ『ローハイド』(1959-1966)に端を発し、イタリア映画出演で名をあげた『荒野の用心棒』(1964)、『夕陽のガンマン』(1965)、『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』(1966)が続き、幽霊を演じた『荒野のストレンジャー』(1972)、南北戦争時代の伝説的ガンマンに挑んだ『アウトロー』(1976)、アカデミー賞を制覇した『許されざる者』(1992)といった監督・主演兼任の傑作群がとどめを刺す。

 『クライ・マッチョ』よろしく、「護送」というテーマでは『ガントレット』(1977)が素晴らしい。逃亡に使ったバスが警察官たちの一斉発砲によって銃弾まみれになるクライマックスは鳥肌もの。当時のイーストウッドの恋人ソンドラ・ロックとの共演も見応え大。

 少年とのバディー的な関係を描く作品としては『センチメンタル・アドベンチャー』(1982)は見ておいた方がいい。正確には、甥っ子と旅をするカントリー歌手の物語で、イーストウッドの歌声も堪能できる佳作。もちろん、『グラン・トリノ』(2008)も少年との友情がまぶしい秀作だ。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 

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