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映画のとびら

2022年11月24日

ビー・ジーズ 栄光の軌跡|映画のとびら #220

#220
ビー・ジーズ 栄光の軌跡
2022年11月25日公開


© 2020 Polygram Entertainment, LLC – All Rights Reserved.
『ビー・ジーズ 栄光の軌跡』レビュー
高音美声トリオは生き続ける

 『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)のサウンドトラック盤をはじめ、全世界で2億2千万枚を超えるアルバムを売り上げた伝説的兄弟トリオ「ビー・ジーズ」のキャリアを追ったドキュメンタリー。監督は、スティーヴン・スピルバーグ作品のプロデュースをこなす一方、監督としても『生きてこそ』(1993)、『コンゴ』(1995)などの劇映画で話題作を放ってきたフランク・マーシャル。

 イギリスはマンチェスターで幼少期を過ごしたバリー、ロビン、モーリスのギブ三兄弟は、父の仕事の都合でオーストラリアはブリスベンに移住した1958年以降、トリオの歌唱グループとして活動を本格化させる。バラード調の楽曲で手堅い人気を得た1960~70年代のイギリス時代を経て、渡米。1970年代半ばのディスコ・ブームの直中に発表した《ブロードウェイの夜》が大ヒットし、その勢いで歌曲を提供した映画『サタデー・ナイト・フィーバー』が大ヒットを記録。同時に、サウンドトラック盤に収録された《恋のナイト・フィーバー》《ステイン・アライブ》《愛はきらめきの中に》《アイ・キャント・ハヴ・ユー》の4曲がシングルカットもされ、それぞれ「ポップ・シングル」チャートで1位に輝くという大成功を収めた。だが、巨大なヒットはそれ相応の負の反動となってトリオを襲うのだった。

 モーリス、ロビンの双子がそれぞれ2003年、2012年に世を去った現在、残っているのは長兄のバリーのみ。この作品のために収録された彼の証言を絡めながら、トリオの結成からスランプ、最盛期、大衆からの偏見による混迷記などが眺望されるという構成。その他の証言者として、エリック・クラプトン、ジャスティン・ティンバーレイク、ニック・ジョナス、ノエル・ギャラガー(オアシス)、クリス・マーティン(コールドプレイ)、ルルなどのほか、ロビン、モーリスのアーカイヴ・インタビューも挿入される。現役アーティストからの称賛もさることながら、クラプトンがギブ三兄弟にマイアミでの録音を勧めたことを契機にトリオのアメリカ、および国際的な快進撃が始まったとする証言はとりわけ興味深い。

 今なおディスコ音楽の象徴とされるトリオだが、あくまでそれは『サタデー・ナイト・フィーバー』での成功が尾を引いているもので、当時の世の趨勢(すうせい)がたまたまトリオの音楽的飛躍と重なったに過ぎない。『サタデー・ナイト・フィーバー』公開後のディスコ人気の凋落がそのまま彼らの低迷に重なったというのも不幸な話である。一方で、その低迷期が各自のソロ活動をうながすことになり、特にバリー・ギブがソングライターとしてバーブラ・ストライサンドやダイアナ・ロスらのアーティストの陰の立て役者になっていく流れには興味をそそるだろう。仮にビー・ジーズについて関心がなくとも、彼らのポートレートとして鮮明な史料になっているのは確かであり、新たに興味を抱く若い観客も生まれるはず。加えて、単なるトリオの活動の履歴に終わらず、兄弟の絆についてのドラマとしてゴールを迎えているあたり、多くの観客の心を静かな感動で満たすことになっているのではないか。

 監督のフランク・マーシャルは、かつて筆者が取材した際の印象でいえば、人柄に優れた人物であった。その人間としてのよさが、たとえば『コンゴ』などでは災いしてしまっており、どうしてもプロデュース作品のみでの評価に終わっているわけだが、今回はそれもいい方向に昇華している。ややサバサバしている部分もあるが、作品としてのバランスのよさ、歯切れのいい編集は現在までの彼の最後の劇映画『南極物語』(2006)に並ぶほど質的安定があるといっていい。

 個人的に残念なのは、彼らの活動紹介の中に映画『小さな恋のメロディ』(1971)のくだりがカケラも言及されていないこと。日本では挿入曲の《メロディ・フェア》《イン・ザ・モーニング》がシングルカットされるほど映画も音楽も大ヒットしたわけだが、イギリス本国やアメリカでは不発。あらためて、この映画の音楽が欧米諸国では取るに足らない存在になっていることが浮き彫りになった。それもまた、このドキュメンタリーから学ぶことができる事実といえるだろう。『小さな恋のメロディ』にふれたことのある人間ならば、この記録映画の鑑賞後、逆に彼らの挿入歌を聴き直したくなること必至である。

 黒人音楽の専用だったファルセット唱法を自らの代名詞にしてしまった「高音美声トリオ」の歌声は、今耳にしても何ら遜色はない。いや、むしろ、この時代だからこそ、新鮮に、心地よく届くのではないか。70年代に大きく花開いたユニークな兄弟ユニットの音楽は永遠に「ステイン・アライブ」なのである。

 11月25日(金)より新宿武蔵野館ほかにて公開
原題:The Bee Gees: How Can You Mend a Broken Heart / 製作年:2020年 / 製作国:アメリカ / 上映時間:111分 / 配給:STAR CHANNEL MOVIES / 監督:フランク・マーシャル / 出演:バリー・ギブ、ロビン・ギブ、モーリス・ギブ、アンディ・ギブ、エリック・クラプトン、ノエル・ギャラガー(オアシス)、ニック・ジョナス(ジョナス・ブラザーズ)、マーク・ロンソン、クリス・マーティン(コールドプレイ)、ジャスティン・ティンバーレイクほか
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『小さな恋のメロディ』を振り返る

 ビー・ジーズ体験の発端は人それぞれだが、多くの日本人にとってのそれは間違いなくイギリス映画『小さな恋のメロディ』(1971)だろう。日本では1971年6月26日に公開され、その年の興行成績の第5位に入る大ヒット作となった。主演のマーク・レスターとトレイシー・ハイドのカップル、および彼らの友人を演じるジャック・ワイルドという3人の少年少女がみずみずしく、いつ見ても心が洗われる。

 当時、イギリスでアイドル的人気を得ていたビー・ジーズは1960年代に発表した自作曲《メロディ・フェア》《イン・ザ・モーニング》などをこの映画のために提供。楽曲によっては再録音までしたという。わざわざ撮影現場まで足を運んだとの逸話まで伝わっており、単なる楽曲提供の印象に終わっていない。中でも、マーク・レスターとトレイシー・ハイドが初々しく映し出されるモンタージュ、あの場面における《メロディ・フェア》の抒情感などただごとではない。

 先述のとおり、イギリスとアメリカでは不入りに終わったが、日本とアルゼンチンでは爆発的にウケた。かつて、第4回東京国際映画祭に参加し、監督作品『ザ・コミットメンツ』(1991)で最優秀監督賞を受賞したアラン・パーカー(『小さな恋のメロディ』で脚本を担当)が「日本に来たら『小さな恋のメロディ』の話ばかり聞かれる」と苦笑していたのを思い出す。本国ではほとんど埋もれた状態にある思春期映画なのだろう。だからこそ、日本では音楽をめぐる愛惜の念も一層、強くなったのかもしれない。なにしろ、サウンドトラック盤LPレコードも当時、世界のどこよりも日本でいちばん売れたのだから。今日に至っても、アルバムがCD化されているのが日本だけというのも面白い。

 ちなみに、今年、この映画の公開50周年を祝して、主演のマーク・レスターとトレイシー・ハイドの来日が実現。映画の特別上映の際には、壇上で変わらぬ仲のよさを見せ、ファンを喜ばせた。線路の果てに消えていったふたりのトロッコは、誰にも止められなかったのである。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


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