特集・コラム

映画のとびら

2023年1月13日

パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女|映画のとびら #227

#227
パーフェクト・ドライバー

   成功確率100%の女
2023年1月20日公開


© 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & M PICTURES. All Rights Reserved.
『パーフェクト・ドライバー/成功確率100%の女』レビュー
女逃がし屋にシビれる!

 『パラサイト 半地下の家族』(2019)でキム家の長女を演じて注目されたパク・ソダムが映画初主演を飾ったスリリングなアクション。幼い逃亡者をかくまった「運び屋」の女性ドライバーが、執拗な追っ手と命からがらの戦いを繰り広げていく。幼い逃亡者を演じたチョン・ヒョンジュンは、パク・ソダムと『パラサイト 半地下の家族』で家庭教師と教え子の関係で共演した子役。監督は『影の殺人』(2009)、『キム・ソンダル 大河を売った詐欺師たち』(2016)のパク・デミン。

 釜山で営業を続ける「ペッカン産業」は、表向きは廃車処理工場、裏では通常の郵便や宅配では難しい搬送を請け負う「特送屋」。どんな危ないブツでも、しつこい追っ手をまいて、依頼人共々、確実に目的地まで届ける。それをかなえているスゴ腕の女性ドライバーこそ、同社の若き社員チャン・ウナ(パク・ソダム)だった。そんな彼女の新たな依頼人は、元プロ野球選手のキム・ドゥシク(ヨン・ウジン)である。待ち合わせの夜、集合場所で待っていても、なかなかドゥシクは現れない。代わりに、泣きじゃくるひとりの少年が彼女の車に寄ってきた。それはドゥシクの息子ソウォン(チョン・ヒョンジュン)。野球賭博に手を染めていたドゥシクは、300億ウォン(約33億円)が入った貸金庫の鍵を事務所から盗んで海外逃亡をはかったものの、賭博の元締めにして現役刑事のチョ・ギョンピル(ソン・セビョク)に計画が漏洩(ろうえい)。身を挺してなんとか息子だけでも逃がそうとしたのである。ソウォンの境遇にほだされ、とりあえず身を隠すことにしたウナだったが、ギョンピルの追跡は想像以上に苛烈を極めていくのだった。

 運び屋の映画となれば、古くはリチャード・フライシャー監督、ジョージ・C・スコット主演の『ラスト・ラン』(1971)、現代ではジェイソン・ステイサム主演の『トランスポーター』シリーズ(2002-2008)がなじみの深いところ。ドライバーが女性という以外、設定としては定番といってよく、最初から安心して物語に臨むことができる。ドラマが本格的に動き出すまでの導入の20分ほど、キャラクター紹介の段取りでややもどかしく感じる向きがあるかもしれないが、演出のキレは尻上がりによくなっていき、敵方の悪徳刑事の素性、性分がハッキリし出す頃には前のめりになって映画を楽しむ姿勢になっているのではないか。小気味よいアクションの佳作、と評するのが適当だろう。

 子どもを守ることになった「仕事人」という面では、ブルース・ウィリス主演の『マーキュリー・ライジング』(1998)あたりも連想されるが、女性と男児という関係性でいけばジョン・カサヴェテス監督、ジーナ・ローランズ主演の『グロリア』(1980)を引き合いに出すべきで、実際、それと似た状況、展開の中、このアクション映画も進んでいく。息子が泣き虫すぎるというもどかしさを差し引いても、素っ気ないヒロインから徐々ににじむ慕情が見る者の心をくすぐり、どうやってもこの「疑似母子」を応援したくなる。ヒルのごとくしつこい刑事を嫌みたっぷりに演じるソン・セビョクもかなり貢献度が高い。

 カー・アクションの手際は言わずもがな。スタントもモンタージュもうらやましいほどに鮮やかで、韓国映画の実力が突きつけられるところだ。加えて、ヒロインが警察一派相手に見せる孤軍奮闘の肉弾戦の数々も特筆すべきだろう。クライマックスの廃車工場での攻防戦などは、音楽の使い方を含め、デンゼル・ワシントン主演の『イコライザー』(2014)を思わせるところがあるだろうか。

 概して素っ気ない表情でハンドルさばきを見せる女逃がし屋は、男児との交流の中で次第に心を開き、汗と血を流しながら最後の戦いに身を投じていく。その気骨でストイックな生き方、たたずまい。後半に明らかにされる出自の秘密がまた妙に説得力を放ち、パク・ソダムの熱演にシビれること請け合いである。

 「母は強し」の格言のもと、女性ドライバーがどう窮地を脱していくか。最後まで目が離せない。

 1月20日(金)全国ロードショー
原題:特送[특송]/英題:Special Delivery / 製作年:2022年 / 製作国:韓国 / 上映時間:109分 / 配給:カルチュア・パブリッシャーズ / 監督・脚本:パク・デミン / 出演:パク・ソダム、ソン・セビョク、キム・ウィソン、チョン・ヒョンジュン、ヨン・ウジン、ヨム・ヘラン、ハン・ヒョンミン
公式サイトはこちら
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文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


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