Vol.02
片瀬江ノ島駅周辺
変わらない写真。
江の島は、外から眺めるものだという印象が強い。鎌倉に住む友人がSNSに上げている毎日の写真のせいかもしれない。相模湾の背景に富士山を写すという構図は、葛飾北斎の時代からきっと定番のもので、波立つ日も、オレンジに染まる夕暮れ時も安定感がある。冬には富士山の雪が増えた減ったと観察しているが、当然、曇天の日もあって、独立峰の裾野がまったく見えない日の方が多いくらい。とすれば、いつも変わらないのは江の島ばかりで、友人は富士山を写しているのではなく、江の島を写しているのかもしれない。
久しぶりに江の島の島内を歩いた。いつも見ている変わらないあの世界。地元の人向けという話を聞いて行った定食屋はしかし、ほとんどが観光客で席が埋まっていた。地魚定食を頼んで壁の室内を眺めていたら、そこにモノクロの写真が貼ってあった。やはり外から眺めた構図ではあったが、今とは違って橋がない。砂浜で地続きとなっている江の島だった。そうか、変わらないものなどないのかと当たり前のことを思うのだが、そこには物見遊山に出かけてきた人影が列となって写っていた。変わらないもの、変わるもの。
帰りの電車に乗るために片瀬江ノ島駅へと行けば、竜宮城のような駅舎は今も健在。塗り直されてビビットにはなっていたけれど、時代がわからなくなる感覚が好ましかった。遠くから眺めているばかりでなく、たまには島へ上陸して、刺身を食べるのも悪くない。