Vol.07

座間

狭く小さなトンネルを抜けて。

車窓からこんもりとした緑の山が見えて、自分の暮らしている街の駅へと電車が入って行ったのかと錯覚した。よくよく考えるまでもなく、普段見ている緑の山は遠くにあり、座間の山は線路脇すぐの場所にあった。山というよりも丘といったほうが正しい大きさかもしれないが、ここでは山と書きたい。わずか数十mの高低差はしかし、電車の中からはとても存在感があるように見えたから。
改札をくぐって、山の方へと登って行く途中に、車ではすれ違うことのできないほど小さなトンネルを通った。トンネルがあることはやはり山の証だとなぜか気分が良くなりながら、その小さく狭いトンネルを抜ける。天井にはこれからの改装予定があるのか、チョークでさまざまな書き込みがされていて、その筆跡がまるでトンネルの模様のように見えた。トンネルを抜けると小さな道は少しずつ坂道になり、途中で山の公園へと向かう道へと分岐している。
山の中というほど道が険しいわけではないのだが、土を感じることができると、それだけで人は少し気持ちが変わる。平日の午前中にもかかわらず、その山の中にいるのは成人した男性ばかりだった。
山の頂付近から景色を眺めると「あそこに米軍の基地がある」と、わかった。自分が暮らしている街にも、森と隣接するようにして米軍基地がある。なんだか妙に納得して、またトンネルをくぐって帰った。

沿線ではたらく人 OP PERSON 小田急線沿線ではたらく人と、ピックアップした方のおすすめのスポットをご紹介します。