Vol.08

⻑後

⽇当たりのいい⼟地で育つ。

⾼校に⼊学して、隣の市に暮らしている友⼈ができた。ティーンエイジャーの⽣活範囲なんてたかが知れているから、隣の市であっても知らない地名がたくさんあることを、友⼈を通して知っていく。たとえ、地名を知ることになったとしても実際に⾏かなければ、どんな空気をまとった⼟地なのか、観光地でもない限り知りようがない。すると⾼校⽣は友⼈を通して、⼟地そのものを理解するようになっていく。⻑後という町は、まさしく⾃分にとってそういう⼟地だった。
⻑後出⾝のその友⼈は、同じ部活のキャプテンだった。⼈をまとめるのが得意だったかどうかは定かではないけれども、⼈から憎まれることなんてない、朗らかなやつだった。⼤きな体で、⼈当たりがいい。けれど、⼀⼈でいることも好きなタイプ。彼が育ってきた環境を類推して、どんな⼟地だとイメージしていたのだろう。結局⼀度も彼の家に遊びに⾏くことはなかったから、本当の⻑後がどんなところなのか、つい先⽇まで知らなかった。

初めて降りた⻑後の駅は、思っていたよりも⼩さかった。彼の体が⼤きかったから、もう少し⼤きな駅を想像していたのだろうか。体格と駅とに相関関係なんかあるわけないのに。駅を降りて、⾞に乗って少し⾛ると果物の直売所があった。売店のおばちゃんに聞けば、⻑後は梨やぶどうの産地だそう。⽇当たりのいい場所で育ったような彼の朗らかな性格を思い出し、やっぱり、と思ってしまった。

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