巡る四季を伝えることの喜び。

「変わった苗字であることは、この仕事においてとてもラッキーだったなと思います。なにせ一回で覚えていただけますからね」と、爽やかに笑う算用子健太さん。ホテルのフロントという職業には、礼節とともに温かみのある接客が求められる。特に〈箱根ハイランドホテル〉のようにリピーターに愛される宿では、宿泊客が何を求めているのか、何気ない会話からヒントを探し、汲み取らねばならない。
「気さくなお客さまばかりなので、コミュニケーションがとても楽しいんです。ただ、こちらから伝える情報はきちんと地に足のついたものである必要があります。ですから『あの道には今こんな花が咲いていますよ』とお伝えできるように、自分の足で歩いて、知識を積み重ねるように心がけています」
幼い頃から「自然の中で暮らしたい」と思い描いていた算用子さんにとって、箱根は理想的な職場だ。フロントからは大きな窓越しに芝生の庭が広がり、山裾へと繋がっている。フロントは、自分の愛する環境を宿泊客に伝える仕事。
「箱根は都心からの距離が近いために、日帰りの方も多い土地です。けれど、ゆっくりと宿泊しなければ、感じられないものも多いと思うんです。標高も少し高いですから夏でも涼しい風が吹きますし、何より、星が綺麗です」
箱根の素晴らしさを知った宿泊客にとって〈箱根ハイランドホテル〉は、一年に何度も“帰る場所”になるのだろう。