そよぐ風が心地よい。朝の江の島。そこに立つだけで、甘い潮の香りがそよぎ、訪れる者を魅了してやまない。
「6月といえば、紫陽花の季節。鎌倉から江の島へ回って、お土産を買ってお帰りになるお客さまも多いですね」
2018年から江の島観光会の会長職に就く二見将幸さんにとって、例年、夏はセーリング競技の季節でもあった。ワールドカップが2017年から3年連続で催されただけでなく、今年7月に開催されるオリンピックでは、前回の東京五輪に続き、江の島が再び同競技の開催地となる予定なのだ。
「同じ競技が同じ場所で開催されるのは江の島が初めてです。中津宮のあたりから眺めるヨットハーバーは壮観ですよ。ヨットがパッと飛び出していくところが見られますから。会場全体の雰囲気を楽しみたい方はお越しください。競技を通じて、江の島の魅力が世界に発信されたらうれしいですね」
国際的な注目もさることながら、江の島は江戸時代に「ゆうべ話してきょうの旅」と川柳に詠われるほど、近隣の人間が手軽に楽しめる日帰りの観光地だった。豊かな自然を有し、「島ぐるみ野外博物館」とも銘打たれている。「季節によって“顔”が違うんです」と二見さんは声を弾ませる。
「つまり、通年で楽しめるんです。まさに風光明媚という表現がしっくりきますね。もともと江戸時代から地元の人がよそから遊びに来た友人を連れてくるような場所。地元の人が誇れる観光地にしたいと常々、思っています」
江の島に生まれ、育った。まさに生粋の「江の島っ子」。「人から“江の島って住めるの?”とよく聞かれる」と笑う。「島に関心が向くことならどんなことでも」と、真摯に地域活性に取り組んできた。ただし、ビジネス的な数値目標は掲げない。まるで家族のことを話すように島の明日を語る。その人情的な温もり。人が温かければ、街も自ずと温かくなる。
「島に来たお客さまが“ なんか、よかったな。いいところだったな”と思ってくれるだけでうれしい。老若男女それぞれの楽しみ方ができる場所です。ぜひ遊びに来てください」
ロマンスカーで立ち寄る江の島というのも、ちょっとオツではないだろうか。
< 写真/星野洋介 文/賀来タクト >
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