特集・コラム

映画のとびら

2020年4月13日

劇場|映画のとびら #054【寛一郎インタビューあり】

#054
劇場
2020年7月17日公開


インタビュー|寛一郎

撮影:山本マオ

永田と沙希の物語を支える存在になれていたらうれしい

――行定勲監督とはとある映画祭で出会ったと、監督ご自身から伝え聞いています。

寛一郎:ええ。その映画祭でお目にかかる機会があって、少しお話をしました。その後、行定さんが僕の出た『チワワちゃん』(2019/二宮健監督)をご覧になって、この役をくださったみたいです。

――行定さんいわく「どうしても野原という役を寛一郎に演じさせたかった」とのことでした。

寛一郎:だとしたら、とてもうれしいですね。お声をかけていただいたときは、すぐに「もちろん、行きます! やらせてください!」と返事をしました。

――行定さんとの現場はどんな時間でしたか。

寛一郎:なんていうか、不思議な時間でした。僕の中で行定さんって『GO』(2001)を撮られた監督というイメージが強くて、最初はどんな方なんだろうと思っていたんです。映画祭でお目にかかったときも、そんなにいっぱい話せませんでしたから。それが『劇場』の現場ではいろいろ話をさせていただいたんですね。とにかく、すごくしゃべる方でした。想像の3倍くらい(笑)。ホント、ものすごくいっぱいお話をされるんです。いい意味で、ずっと左脳で話をされているみたいな感じがあるといいますか。演出もそんな感じで、画(映像)へのこだわりが強いんです。でも、俳優部に対して干渉するということはありませんでした。僕にも(永田役の)山﨑(賢人)さんにもそんなに何かをおっしゃることなく、で。

――とはいえ、行定さん、テイクは重ねられたのではないですか。

寛一郎:ええ、テイクは重ねられていました。モノの置き方だったり、台詞の入り方だったり、そういう細かい部分へのこだわりの結果だと思います。

――僕個人としては、この映画の中の野原という永田の友人の存在、役の重さは大きかったです。さらに、その野原役を寛一郎さんが演じることで、作品の空気がウソになっていない感触がありました。

寛一郎:ありがとうございます。でも、褒めすぎでしょう(笑)。

――野原という男は永田という主人公に対して最後の批評家みたいな位置にあるじゃないですか。

©2020「劇場」製作委員会

寛一郎:確かに。永田と野原の距離感という部分では、演じ終えて振り返った当初は「離れすぎだったかもしれない」という反省がありました。ちょっと野原が俯瞰しすぎていないかなって。でも、完成品を見たとき、監督に「どうでしたか」と伺ったら「野原の距離感、よかったよ。僕のイメージしていたものとは違ったけど、結果的によかった」とおっしゃってくださって、ちょっと安心しましたね。僕自身は思うところがありますけど、監督自身がそう思ってくださるなら、と。

――永田にとって野原は親のような存在でもあります。

寛一郎:沙希(松岡茉優)が母親なら、野原は父親という部分はあると思います。すごく達観していて、永谷にいろいろ言いますよね。でも、そう言いながら、自分のことに関しては何もできていないという部分もある気がします。僕の憶測ですけれど。そういった意味でのチャーミングさ、愛すべき愚かさみたいなものを野原には感じますし、僕は好きですね。野原は野原で何か罪を抱えていそうな感じがありますから。

――山﨑賢人さんは共演してみていかがでしたか。

寛一郎:最初にお会いしたとき、「よろしくお願いします」と敬語で挨拶をしたんですけど、山﨑さんの方から「(永田と野原を演じる僕らは)親友役なんだから、タメ口でいこうよ」と、開口一番におっしゃってくださって。そう持ちかけてくださったのはありがたかったですし、実際、すぐに話しやすい空気感を作ってくださいました。意図して、というより、山﨑さんの人柄がそうさせている感じでしたね。野原が持っている空気感とか、野原の永田への目に見えない愛情というのは、そういうところから作られたんじゃないかなと思います。もちろん、山﨑さんのことはすごく好きですから、そういう部分の僕の感情もきっと大きかったですね。

©2020「劇場」製作委員会

――おっしゃるとおり、山﨑賢人という俳優は一緒にいてとても居心地がいい人。少年に接するかのようなさわやかさがあります。一方で、今回共演されている女優陣(松岡茉優、青山役の伊藤沙莉)は子役時代から長くキャリアを積んでいる方々です。演技もどこか肝の据わった迫力が感じられますね。

寛一郎:超ベテランです。悪い言い方に聞こえたら申し訳ないですけど、化け物みたいな人たちといいますか(笑)。スゴイという意味ですけど。怖いなぁと思いながら、ご一緒させていただきました(笑)。でも、そういう環境もまた、永田というキャラクターの「周りに支えてもらっている」という部分を反映している感じが現場にはありましたね。

――行定さんいわく、この作品は「どうしようもなさのオンパレード」という青春映画、恋愛映画です。どこか他人事にはできない部分が劇中に散見されますが、寛一郎さんご自身はこの物語はどのように映っていますか。

寛一郎:永田と僕の共通点って「芝居に携わっている人間」という部分しかなくて、ほかは何から何まで違うはずなんですけど、なぜか「知っている」んですね。永田の感情を知っている、彼の愚行がわかる、っていう。きっと男性なら永田の愚かさがわかるのではないでしょうか。それは又吉直樹さんの原作のすごさであり、この映画の脚本の力ですね。おのおののキャラクターの感情の機微が手に取るようにわかる。それって、もしかしたら錯覚なのかもしれないんです。でも、共感できてしまう。僕の言葉で言うと、この物語は「後悔のオンパレード」。でも、人生ってそうだよね、っていう。「ああ、あのとき、ああすればよかったな」っていう、その連続があるんです。でも、とにかく沙希ちゃんが素晴らしいですよね。本当に素晴らしい女の子ですよ。あんな子、いません。永田を信じて、許して……、すごいですよ。もう、ジブリの世界の人、みたいな感じ(笑)。男は「甘え」しかない人種ですから、あれくらい甘えられる人がいたらいいなって思います(笑)。

――寛一郎さんはもうひとつ、「男のどうしようもなさ」が別の形で描かれている映画にご出演されていますね。その作品『一度も撃ってません』(2020/阪本順治監督、石橋蓮司主演)の経験はいかがでしたか。

寛一郎:最高でした! 映画も撮影も、阪本順治さんも、みんな最高!

――父上の佐藤浩市さんとの初共演も実現しました。

寛一郎:こういう家柄の人間ですから、それだけでハードルが高くなってしまうわけですけど、(共演を)やらずに終わってしまうのもどうかという気持ちがどこかにあって。いや、もちろん彼(佐藤浩市)はまだ死んでいませんけれど、やらずに終わってしまうよりは、こうやって(共演する作品を)残すことはいいよね、と。僕は最初、嫌だったんですよ。もうちょっとちゃんとした、というか、ちゃんとした僕で、というか……。うまく言えませんけど、(佐藤浩市との共演は)ちゃんとやりたかったんです。でも、ああいうベテラン勢の(役者がそろっている)中でやれたというのは結果としてよかったなと思っています。

――寛一郎さんとしては、父上との共演がまだ早いという思いがあったということですか。

寛一郎:ええ、早かったですね。「まだいいだろう」と思っていました。でも、結果としてよかったかな、と。これが最初で最後というわけではないと思いますし。

――佐藤浩市さんが父上の三國連太郎さんと初共演されたのが映画『人間の約束』(1986/吉田喜重監督)でした。佐藤浩市さんが30代半ばのことです。

寛一郎:そのつぎに共演が『美味しんぼ』(1996)で、(それまでの10年くらい共演が)なかったんですよね。『大鹿村騒動記』(2011/阪本順治監督)を入れても3本だけで、ほとんどない。だからこそのよさもあるでしょうけど、僕ら(佐藤浩市と寛一郎)の主観としては「もっと残したいよね」という思いはあります。

――『一度も撃ってません』でいえば、ああいう物語、ああいう共演陣の空気の中で作られたことに、最初の父子共演も独特の味わいが出たと思いますし、なごやかな気分も獲得されたのではないでしょうか。佐藤浩市さんから「NGを出して、(息子に)冷ややかな目で見られました」と冗談めいた発言が出るのも微笑ましいです。

©2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

寛一郎:NG、出していましたね。台詞を何度か噛んだんですよ。でも、緊張という意味では、僕もヤバイくらい緊張していまして(笑)。あの空気感って、どの現場にもなかったもので、この関係性だからこそ生み出される空気感だったといいますか。(撮影の合間も)一切、しゃべらない。芝居以外では一切、しゃべりませんでした。これがまるで初めての撮影現場みたいに緊張した中でやっていて、お互いもうガチガチの状態でずっと(芝居を)やっていましたね(笑)。

――佐藤浩市さんといえば、用意周到に撮影現場に来る人です。現場でも動きを考えながら、段取りから綿密に芝居を組み立てる。それを現場で目の当たりにしていかがでしたか。

寛一郎:その「用意」の段階を小さいときから僕はずっと見てきていましたからね。それについては、よくわかっていたことではありました。ただ、この『一度も撃ってません』でいえば、彼は息子をおぶるくらいの気持ちでやっていたんじゃないかな。それを超える何かはあの座組では生まれなかったと思います。それは彼をナメているということではなく、『Fukushima 50』(2020)や『64 –ロクヨン-』(2016)のときのように、もっと彼が何かを背負わなければならなかった作品もあるわけで、そういうのを(いずれ共演作品で)見てみたいですね。だから、僕が見たかった彼はまだ(今回の初共演では)見ていないんです。

©2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

――そういう思いが残ったということは、考え方によってはつぎの共演に気持ちがうまくつながった機会だったとも感じられます。

寛一郎:そうですね。それはあると思います。でも、(今後、父子共演がかなうとしたら)僕次第だと思います。それしかないと思います。

――佐藤浩市という俳優に伍する存在にならなければいけないという気概が持てた現場だったということでしょうか。あらためて身が引き締まった、といいますか。

寛一郎:そうですね。……でも、どうなんだろう。僕自身のスタンスとしてはあまり変わらない気もしますね。うん、変わらないんじゃないかな(笑)。

――『一度も撃ってません』では石橋蓮司というベテランとの共演もありました。

寛一郎:蓮司さんはすごいです。あの年齢で一切、台詞も噛みません。何より『一度も撃ってません』という作品が映画としてメチャクチャ面白かったですね。「うわー、昭和だ!」って思いました(笑)。「映画だ!」って。最高ですよ。

©2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

――思うに、三國連太郎さんにしても佐藤浩市さんにしても、いわゆる「演劇」というものから遠い方々でした。あくまで映像の仕事中心。寛一郎さんにもどこかそんな気分があります。その意味でいくと、寛一郎さんが今回、映画『劇場』で舞台人の若者として登場するのは面白いですね。

寛一郎:(三國連太郎も佐藤浩市も)みんな孤独だったと思うんです。というのは、この間、読んでいたある本に書かれていたんですけど、「孤独な読書の延長上にあるのが映画だ」と。「それがなりえないのが演劇」であり、「演劇は観客に対して笑いかけることもできるし、観客を舞台に引っ張り上げることもできる」と。でも、「映画は違う」と。ああ、なるほどな、と思いました。だから僕も映画が好きなんだろうし、映画が好きなんだろうなって。自分なりに腑に落ちたといいますか。

――劇中劇とはいえ、ああいう演劇の空間に立つというのはどういう感触でしたか。

寛一郎:面白かったです。もちろん、そこに「演劇をやっている」という感覚というか、自負みたいなものはありませんでした。そこがダメなところだと思うんですけど(笑)、どこかでカメラで撮られている「安全」みたいな気持ちがありましたね。確かに、今は「演劇」への興味はそんなに強くありません。なぜでしょうね。それは僕の中に何か「固定概念」みたいなものもあるからなのかな。

――佐藤浩市さんにしても、あれだけ三谷幸喜さんから舞台出演の誘いを受けてもガンとして首を縦に振りません。三國連太郎さんもそんな気分がありました。その流れを考えると、寛一郎さんの感触もわかるような気がします。

寛一郎:その「流れ」があるから、というのはあるかもしれませんね。彼(佐藤浩市)がやらないのは、そういうことなのか、それとも単なるビビリだからなのか、そこはちょっとわからないんですけど(笑)。僕自身は、どうなんでしょうね、やる日が来ないかもしれませんし、来るのかもしれません。でも、(野原を演じてみて)演劇をやる人は大変だなって思いました。ちょっと想像できないです、僕みたいなタイプの人間には。

――そういった『劇場』『一度も撃ってません』への出演を含めて、最近の俳優活動の手応えはいかがですか。

寛一郎:どうなんだろう。もちろん、メチャクチャ恵まれていると思いますし、あの時期(2018年暮れ)に阪本順治さんとご一緒できたということでがんばってこられたというところもあります。僕にとって阪本順治さんは憧れの存在でしたから。でも、こういう(俳優の)仕事って、興奮することもあれば、ガッカリすることも多いんです。自分自身に対することを含めて、ですけど。焦りだってあります。だから、どう楽しみや変化を見つけていくかが大事というか。それがこれからの僕の課題だと思っています。

――身の回りの環境としてはいかがでしょう。木村拓哉さんと共演されたテレビドラマ『グランメゾン東京』(2019/TBS系)などは大きかった印象があります。

寛一郎:大きかったですね。本当にありがたいことに。ああ、みなさん、まだテレビを見てくださっているんだなって(笑)。僕自身があまりテレビを見ない人間なので、そんな表現になっちゃうんですけど。でも、出てみて、やってみて感じたことですね。この『劇場』でも、やってみてわかったことはいろいろありましたから。

――そういう「手応え」は大事ですね。

寛一郎:『劇場』に関しては、まず又吉さんの原作が素晴らしかったということですね。その原作を崩さず、さらにギュッと仕上がられている行定さんも素晴らしいです。(映画オリジナルの)終わり方も説得力があると思います。僕自身は「何やってんの?」という感じに見られるかもしれませんけど(笑)、永田と沙希ちゃんの物語をうまく支えるような存在になれていたとしたらうれしいです。

寛一郎(かんいちろう)プロフィール
1996年8月16日生まれ。東京都出身。2017年、俳優デビュー。『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(2017)で第27回日本映画批評家大賞新人賞、『菊とギロチン』(2018)で第92回キネマ旬報ベスト・テン新人賞、第33回高崎映画祭最優秀新進俳優賞、第28回日本映画批評家大賞助演男優賞を受賞。そのほかの主な映画出演作に『心が叫びたがってるんだ。』(2017)、『チワワちゃん』(2019)、『君がまた走り出すとき』(2019)、『雪子さんの足音』(2019)、『下忍 赤い影』(2019)など。

 

『劇場』レビュー
© 2020「劇場」製作委員会
重く胸に迫るボクらのラブストーリー

 芥川賞作家・又吉直樹が『火花』(2015年刊)に続き、2017年に発表した同名小説を映画化。不器用な生き方しかできない演劇青年と、彼を献身的に支える女性の7年に及ぶ愛の軌跡を切なくもみずみずしく描く。主人公の永田に山﨑賢人、ヒロインの沙希に松岡茉優がふんしている。

 関西、青森からそれぞれ上京してきた永田と沙希は渋谷で出会い、ほどなくして沙希の住む下北沢の部屋に永田が転がり込む形で同棲を始めた。中学時代の同級生だった友人の野原(寛一郎)と劇団「おろか」を立ち上げた永田は創作の日々を送るも、なかなか思うように世間の評価が得られない。その苛立ちはそのまま恋人に向けられる。これを沙希は正面から受け止め、無条件で包み込むのだったが、その優しさが永田をさらに追いつめた。やがて、永田は沙希の部屋を出てひとり住まいを始めていく。

 演劇人のメッカともいうべき下北沢で夢を追う青年の物語は、芸術家の業(ごう)を随所ににじませて、身動きの取れない男女の関係を浮き彫りにしていく。ささやかなカップルの恋の顛末は、人によっては共依存状態のそれに受け取られることもあるだろうが、立場と状況が異なるだけで、むしろひどく一般的、普遍的なものといえるだろう。40代以降の観客にはいつかどこかで体験した経験の断片がそこにあり、若い世代には目前の出来事のように生々しく迫ってくるのではないか。そう、これは「ボクらの物語」なのだ。

 原作を読了次第、監督に立候補したという行定勲は、独自のラストシーンを組み入れることで、原作の世界を押し広げ、新たな「劇場体験」を獲得することに成功したといっていい。性描写による「愛の疲弊」を安易に盛り込むことなく、それでいて人間のもろさ、愚直なる行き詰まり感を鋭く深く活写。昨今流行のコミック・ベースのラブストーリー気分で見始めると、その重さ、大きさに圧倒されるだろう。

 山﨑賢人、松岡茉優はいずれも好演。山﨑にとって永田はキャリア史上、最も人間くさい役どころであり、松岡は自ら考案したクセまで織り込んで沙希の純粋さをあぶり出した。そんなふたりの存在を「真実」にしているのが、脇を固める共演者たち。劇団「おろか」の元メンバー・青山の伊藤沙莉は松岡同様、長いキャリアを反映した存在感を誇り、永田の至らぬ部分をバッサリ斬る。一方、永田の同級生・野原役の寛一郎は、ひょうひょうとした空気を漂わせながら、時に永田を堅く擁護し、時に永田を厳しくいさめる。伊藤、寛一郎の個性も、下北沢の物語には必要不可欠な要素であった。

 行定勲といえば『GO』(2001)、『世界の中心で、愛をさけぶ』(2004)で広く知られる映画監督だが、その代表作のひとつとしてこの『劇場』を加えることに無理はないだろう。あらゆる角度であらゆる世代の「青春映画」を撮り続けている名手は、新たな地平、視点でその深淵を探ることにまた成功した。

 7月17日(金)全国ロードショー
原題::劇場 / 製作年:2020年 / 製作国:日本 / 上映時間:136分 / 配給:松竹、アニプレックス / 監督:行定勲 / 出演:山﨑賢人、松岡茉優、寛一郎、伊藤沙莉、上川周作、大友律、井口理(King Gnu)、三浦誠己
公式サイトはこちら
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あわせて観たい!おすすめ関連作品

©︎2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ
COMEDY
タイトル 一度も撃ってません
製作年 2019年・日本
上映時間 100分
配給 キノフィルムズ
監督 阪本順治
出演 石橋蓮司、大楠道代、岸部一徳、桃井かおり、佐藤浩市、豊川悦司、江口洋介、妻夫木聡、新崎人生、井上真央、柄本明、寛一郎、前田亜季、渋川清彦、小野武彦、柄本佑、濱田マリ、堀部圭亮、原田麻由
公式サイト http://eiga-ichidomo.com/
2020年7月3日(金)より公開決定!

佐藤浩市&寛一郎の親子共演が実現!

 寛一郎出演作品として見ておきたいのが、こちらのハードボイルド風コメディー。名バイプレイヤーとしてあまたの作品で脇を締める名優・石橋蓮司が17年ぶりに主演を飾った作品である。

 主人公は、市川進(石橋蓮司)なる老小説家。理想のハードボイルド小説を書くために、暗殺の依頼をヒットマン(妻夫木聡)に仲介しては、それをネタに作品を書き続けてきた男。しかし、ちまたでは彼こそが伝説のヒットマンということになっており、怪しい行動についに疑問を抱いた妻(大楠道代)はこれを浮気と判断。一方で、敵方のヒットマン(豊川悦司)には命をねらわれるハメになる、という物語。

 よれよれの格好で朝のゴミ出しに出たかと思えば、黒いハットにトレンチコートで夜の街に繰り出す。石橋蓮司という男の庶民性、俳優としてのりりしさを振り幅大きく見せようとする仕掛けが微笑ましい。

 石橋の盟友・原田芳雄を主演に『大鹿村騒動記』(2011)を撮った阪本順治が監督に当たり、松田優作主演の傑作テレビドラマ『探偵物語』(1979)を手がけた丸山昇一がシナリオを執筆。市川の親友役で岸部一徳、桃井かおり、市川の担当編集者役で佐藤浩市、暴力団幹部に柄本明、詐欺師役に江口洋介、ヒットマンの恋人に井上真央、クスリの売人役に柄本佑と、石橋を慕う人気俳優陣が見事なそろい踏み。確かな芝居、掛け合いを見せて、とぼけた味わいの喜劇を堅実に、優しく固めている。

 寛一郎はベテラン編集者(佐藤浩市)から市川の担当を引き継ぐ若き雑誌編集者・五木要役で出演。父・佐藤浩市とはこれが初共演となり、編集部内、飲み屋で父親相手にズバズバとした物言いを見せたかと思えば、路上での石橋蓮司とのふたり芝居でもベテラン相手に臆することなくりりしい一面を披露。三國連太郎、佐藤浩市とともに、三代続けて佐藤家を演出する機会に接した阪本順治の熱意にしっかり応えている。

©2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

文・インタビュー/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


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