特集・コラム

映画のとびら

2021年7月2日

ゴジラvsコング|映画のとびら #124

#124
ゴジラvsコング
2021年7月2日公開


(C)2021 WARNER BROTHERS ENTERTAINMENT INC. & LEGENDARY PICTURES PRODUCTIONS LLC.
『ゴジラvsコング』レビュー
いよいよ体系的にふくらむ怪獣世界

 文字どおり、日米の二大人気モンスターの衝突を描く大型アクション。今や「モンスター・バース」なる怪獣映画カテゴリーを掲げる米版「ゴジラ」シリーズと「キングコング」シリーズ、その交錯をかなえた一種の異種格闘技戦であり、双方の新たな出自、設定まで開拓しようとした野心作でもある。日本からは小栗旬が出演者のひとりとして参戦。監督は『ブレア・ウィッチ』(2016)、『DEATH NOTE/デスノート』(2017)など、ホラー、スリラーの分野で頭角を現してきたアダム・ウィンガード。

 物語は『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019)の後日談として始まる。ゴジラ、キングギドラ、ラドン、モスラというモンスター4頭の激突で各地が荒れ果てたものの、人間たちの野望は衰えるどころか、いよいよ気炎を上げる勢いをつけていた。何かを嗅ぎつけたのか、ゴジラは巨大企業エイペックス社のフロリダ施設を襲撃。その被害を訴えるエイペックス社CEOウォルター・シモンズ(デミアン・ビチル)の声に反応し、未確認生物特務機関モナークではネイサン・リンド(アレクサンダー・スカルスガルド)、アイリーン・アンドリュース(レベッカ・ホール)の両博士に髑髏島(スカル・アイランド)からキングコングを連れだし、そのルーツを探ることを指示。一方、エイペックス社を信用できないマディソン(ミリー・ボビー・ブラウン)と彼女の級友ジョシュ(ジュリアン・デニソン)、バーニー(ブライアン・タイリー・ヘンリー)の3人はゴジラの真意を探るべくエイペックス社に侵入する。そのエイペックス社には今は亡きゴジラ研究者・芹澤猪四郎(渡辺謙)の息子・蓮(小栗旬)の姿もあった。やがて、コングが輸送船で海を渡り始めると、ほどなくしてゴジラが出現。両モンスター対決の火蓋が切られるのだった。

 冒頭部、古代人が描いたとおぼしき壁画が映される。そこに刻まれていたのは、対決するゴジラとコングの姿。一種の天敵、あるいは好敵手としてのイメージだろう。そのように両モンスターが衝突する理由をサラリと印象づけることで、映画はゴジラとコングの運命的な遭遇を円滑に観客へと送り届ける。一旦、バトルが始まると、その後は雪崩のようにあまたのアクションが連続。CG合成が大半を占めるとはいえ、迫力のある構図、スピーディーなモンタージュによってスリリングな映像世界が楽しめる。

 名前こそゴジラが先に出ているが、どちらかといえばコングとその周辺を軸に物語が展開し、そこにゴジラが一枚噛んでくるというようなドラマ構成。コングの「故郷」をめぐる探訪がそのままゴジラとの激突につながるという仕組みは悪くない。すでに『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)で明らかなように、コングが地下世界とつながりがあることは想定済みであり、その解釈がどこまで広げられるかがこれまた今回の大きな見どころのひとつとなっている。それはやはり欧米的な発想に基づくもので、人によっては怪奇幻想小説ゆかりの「クトゥルー神話」の匂いを嗅ぎ取る向きも多いだろう。日本発の怪獣格闘劇に一層、海外的な彩りが加わった、とするべきか。自ずとコングへの愛着、共感が深まる仕掛けになっており、コングと手話で会話する少女(ケイリー・ホトル)の登場もその彫り込みにひと役買っている。

 一方のゴジラは神秘的な立ち位置のまま放置されているといっていい。もはや放射能汚染怪獣のごときレッテルは希薄になっているが、いよいよ自然界の長のような気分も与えられており、人間の欲望=企業悪への抵抗勢力として設定されているあたりに、やはりほどよい共感を抱かせる仕掛けを持っている。ゴジラは正義、コングは人間的。人情的に考えれば、ぶつかる必要は決してないといえばない両モンスターなのだが、先述のとおり、太古からいがみ合ってきたという設定なのだから仕方がない。あるいは、今後の「モンスター・バース」の発展次第では関係図に変化が起きる可能性もあるだろう。「マーベル・シネマティック・ユニバース」同様、ゴジラ、コングの世界も体系的に眺め、接する必要が出てきたようである。

 小栗旬演じる若い博士は、渡辺謙の愚直なまでの生真面目なそれと比して、設定上、ややマッド・サイエンティスト的な雰囲気が見られるだろうか。彼に英雄的な活躍だけを期待すると興がそがれるかもしれないが、これはこれで新しい。この調子でいけば、メカニコングの登場も夢ではないのではないか。

 怪獣映画の好事家がときめくような深みを獲得しつつ、バトル・アクションとしての派手で開放的な興奮はそのままに。今後のシリーズの発展を占う意味でも見ておきたい一作といえる。

 2021年7月2日(金)全国ロードショー
原題:Godzilla vs Kong / 製作年:2021年 / 製作国:アメリカ / 上映時間:114分 / 配給:東宝 / 監督:アダム・ウィンガード / 出演:アレクサンダー・スカルスガルド、ミリー・ボビー・ブラウン、レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、小栗旬、エイザ・ゴンザレス、ジュリアン・デニソン、カイル・チャンドラー、デミアン・ビチル
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 ゴジラとキングコングの一騎打ちは今回の『ゴジラvsコング』(2021)が初めてではない。ゴジラ映画のお膝元、東宝が60年ほど前に発表した『キングコング対ゴジラ』(1962)がその第一歩。『ゴジラ』(1954)に始まるシリーズ第3作であり、東宝創立30周年を記念した大作。海外の人気モンスターを「招聘」するというアイデアは期待にたがわぬ反響を呼び、シリーズ屈指の動員記録を今も保持している。エンディングも両モンスターに配慮した結果になっており、タイトルに相手国のモンスターの名前を先に冠していることも含め、『ゴジラvsコング』にその精神は受け継がれているといっていい。

 『キングコング対ゴジラ』の大ヒットは「ゴジラ」シリーズとは別に、それ自体の続編も製作されている。その作品『キングコングの逆襲』(1967)ではコングが完全に正義のモンスターとして登場し、マッド・サイエンティストが放つ機械仕掛けのコング=メカニコングと一戦を交えるというもの。ここでの設定や雰囲気も『ゴジラvsコング』に反映されている部分がある。

 キングコングについて、ちょっと知識として怪しいという観客には、やはりメリアン・C・クーパー監督のクラシック作品『キング・コング』(1933)をオススメしたい。ウィリス・オブライエンによるモデル・アニメーションのコングはCG造型とは異なるアナログの味わいがほとばしった。こちらのリメイク作品にはジョン・ギラーミン監督の『キングコング』(1976)とピーター・ジャクソン監督による『キング・コング』(2005)があるが、やはりそれぞれの魅力があふれていて楽しい。ギラーミン版では機械仕掛けの実物大コングが撮影で用意され、その続編『キングコング2』(1986)では人工心臓移植によってコングをよみがえらせただけでなく、相手役として雌コングも登場。何かと話題に事欠かなかった。

 「モンスター・バース」におけるコングは、1933年版に敬意を払いつつ、新たな切り口で迫った別種の存在になっている。『キングコング:髑髏島の巨神』(2017)は新たな時代の、新たな観客のために登場が必要とされたコング映画だった。コングの記憶は未来の観客に向けて確かにつむがれている。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 

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