特集・コラム

映画のとびら

2021年8月13日

ドント・ブリーズ2|映画のとびら #131

#131
ドント・ブリーズ2
2021年8月13日公開


『ドント・ブリーズ2』レビュー
息が止まるほどの新たな戦い

 サム・ライミのプロデュースで描くサバイバル・スリラー第2弾。今回は、前作で生き残った盲目の老人を主人公に、謎のグループとの新たな戦いを描いていく。第1作に引き続き、主人公の老人に『アバター』(2009)の鬼大佐役で知られるスティーヴン・ラング。前作で監督と脚本を務めたフェデ・アルバレスはプロデュースに回り、アルバレスとともに脚本を書いたロド・サヤゲスが劇映画デビューを飾った。

 前作の「事件」から8年。あの盲目の老人ノーマン・ノードストローム(スティーヴン・ラング)は新たな生活をスタートさせていた。それも、11歳になる娘を抱えて。彼女、フェニックス(マデリン・グレース)はノーマンから過保護ともいえる注意をもって育てられていた。フェニックスにはそれが窮屈で仕方がない。家の近くにあるコヴェナント養護院に暮らす子どもたちの生活の方が楽しく映るくらいだった。しかし、ノーマンの不安は的中する。フェニックスに怪しい視線を送っていた男レイラン(ブレンダン・セクストン3世)が、数人の武装集団と共に、ついにふたりの家を襲撃したのだった。

 前作は、現金強奪をたくらむ若者3人がノーマンの屋敷に忍び込んだことで起こる戦いを描くスリラーだった。盲目の老人との攻防戦は「息を止めろ」との題名にふさわしく、まさに息詰まる緊張感にあふれ、世界中で大ヒットを放つ。しかし、最大の特徴は、若者たちと老人、それぞれが抱える事情を描写し、どちらにも同情の念が起きるようにドラマが構成されていたことだった。若者たち(特にヒロイン)には家庭の事情から大金が必要であり、老人は老人で過去の悲劇ゆえに心を閉ざす哀れな人間であった。どちらの立場にくみしていいのか、判断できない観客は、事態の混乱にますます翻弄されるわけである。

 その意味では、この第2作は勧善懲悪の構図。同情の行く先はほぼノーマンにしぼられているといっていい。前作で悪役の位置にいた彼の側に立つことで、いったいどんな景色が開かれるのか。そんな視点の移動は前作のファンにとっては刺激的であろうし、この第2作を最初に見る観客にも予備知識いらずの興奮を十分に与えてやまない。ノーマンを演じるスティーヴン・ラングには誰もが『アバター』における強靱な海兵隊員のイメージがすり込まれているはずであり、この第2作に関してはそのただでは死なぬ印象をいよいよ前面に打ち出している。あとは映像が放つスリリングなドライブ感に身を任せるだけでいいのだから。もっとも、題名の「息を止めろ」からはちょっと道を外れるような気分があるかもしれないけれど。

 それにしても、なぜノーマンに娘がいるのか。前作のクライマックスにおけるノーマンの異常心理を知る観客にとっては、それだけで心をたぎらせるミステリーだろう。そもそもノーマンとはどんな出自を持った人間なのか。その一端を目にすることができるのも、この第2作の楽しみである。

 意外性がすべての作品、としていい。ここまで文章に目を通し、わずかながらもこの映画の情報を得てしまった読み手はある意味、不幸ではあるが、武装集団の真の狙い、彼らとのノーマンの密室戦はそれだけで十分に息が止まるほどの見ごたえがある。まだまだノーマンの物語は終わらない。恐らく、きっと。

 2021年8月13日(金)全国ロードショー
原題:Don’t Breathe 2 / 製作年:2021年 / 製作国:アメリカ / 上映時間:98分 / 配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント / 監督:ロド・サヤゲス / 出演:スティーヴン・ラング、マデリン・グレース、ブレンダン・セクストン3世
公式サイトはこちら
OPカードで『ドント・ブリーズ2』をおトクに鑑賞できます

TOHOシネマズ海老名

映画を鑑賞すると小田急ポイントが5ポイントたまります。ルールはたったの3つ!

イオンシネマ

OPカードのチケットご優待サービスで共通映画鑑賞券をおトクにご購入いただけます。

文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


OPカードがあれば最新映画や単館系話題作がおトクに楽しめます

TOHOシネマズ海老名

映画を鑑賞すると小田急ポイントが5ポイントたまります。ルールはたったの3つ!

イオンシネマ

OPカードのチケットご優待サービスで共通映画鑑賞券をおトクにご購入いただけます。

新宿シネマカリテ

当日券窓口でOPカードをご提示いただくと、大人(一般)300円引き、学生(専門学校、短大、大学、大学院)200円引きとなります。

新宿武蔵野館

当日券窓口でOPカードをご提示いただくと、大人(一般)300円引き、学生(専門学校、短大、大学、大学院)200円引きとなります。

music.jp800「OPカード特別コース」