特集・コラム

映画のとびら

2022年5月20日

太陽とボレロ|映画のとびら #183【全国共通鑑賞券プレゼント】

#183
太陽とボレロ
2022年6月3日公開
★「太陽とボレロ」の全国共通鑑賞券をプレゼント!

©2002「太陽とボレロ」製作委員会
『太陽とボレロ』レビュー
人間を見つめる独自の目

 『TAP -THE LAST SHOW-』(2017)、『轢き逃げ-最高の最悪な日-』(2019)に続く水谷豊の監督第3作。解散間近の地方交響楽団の創立者、メンバーらの悲喜こもごもを描く。主演は『武士の一分』(2006)、水谷とはテレビ時代劇『無用庵隠居修行』シリーズ(2017-2021)で共演が続く檀れい。これが映画主演デビューとなる。楽団を支援する中古車販売業の社長に、水谷と映画『王妃の館』(2015)やテレビドラマ『相棒 season 19』(2020-2021)、『相棒 season 20』(2021-2022)で共演している石丸幹二、楽団員のトランペット奏者に『jam』(2018)、『チェリまほ THE MOVIE ~30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい~』(2022)の町田啓太、同じく楽団員のヴァイオリン奏者にテレビドラマ『24 JAPAN』(2020-2021)の森マリア。

 18年の歴史を持つアマチュア・オーケストラ「弥生交響楽団」は今、運営の危機に立たされていた。支援者を募るために奔走していた創立者の花村理子(檀れい)だったが、心の支えでもあった中古車販売業の社長・鶴間(石丸幹二)も会社の経営が芳しくなく、あまり甘えるわけにはいかない。追い討ちをかけるように、理子の大学時代の恩師であり、楽団の指揮者を3年間、務めていた指揮者の藤堂(水谷豊)も病に倒れてしまう。いよいよ解散を覚悟した理子は、団員たちに解散コンサートを提案。心が折れかけているオーケストラ・メンバーとの団結をはかろうと、さまざまな努力を重ねていく。

 監督第1作では最後の公演にかける天才タップダンサーと若者たちの姿を、第2作ではひとつの轢き逃げ事故をめぐる被害者と加害者それぞれの姿を描いてきた監督・水谷豊だが、今回は地方交響楽団のフィナーレを舞台にそこに集う人間たちの感情を彼ならではの切り口で見つめ、つむいだ。

 水谷にとって、常に関心の対象は人間。それぞれの状況で、どんな対応をするのか、どんな感情を見せるのか。それらを見つめる目は冷徹だ。簡単に持ち上げもしなければ、おとしめたりもしない。諦めもしないが、無用な期待もしない。「人間はどうしようもない。でも、だからこそ素晴らしい」。そんな感情が支配しているゆえに、どの作品も実は一筋縄ではいかない仕上がりになっている。ちまたにあふれる映像作品と同じ感覚で見ようとすると、恐らく理解できない。あっけなく、つまらなくさえ映る。でも、その視点、人間を見つめる立ち位置になじむと、妙な味わいに気がつく。独自の感覚が俄然、面白くなってくる。

 映像的にもさほど凝ったことはやらない。少なくとも、トリッキーな仕掛けはつくらない。細かいショットを矢継ぎ早に組み立て、臨場感をあおろうともしない。それらは水谷にとって、小細工でしかない。

 この『太陽とボレロ』(2022)でも、そこで展開するドラマは全2作に比べて陽気であり、温もりを放っている。時にユーモアや笑いさえにじむ。そこは新しい。しかし、冷静な視点は外されていない。どこかで「観察」している。「達観」している。いろいろな人間、いろいろな出来事を見てきた結果だろう。だから、場面の流れはあっても、細かい決めごとはしない。そこにドラマの自由が生まれる。芝居の幅が広がる。俳優たちはその感触を現場で楽しんだ。それを目の当たりにする観客は試されているのかもしれない。

 今回の映画で決めごとがあったとすれば、俳優たちが楽器を自ら操らなければならない事態にあったことだろう。その「型」は決まっている。でも、それだけ。あとは人間がたゆたうのみだ。

 ラスト、この物語が本当にハッピーな結末なのかどうかは、実は観客に預けられている。監督・水谷豊は優しい。同時に、厳しい。まだまだその資質は読めない。真の意図がつかめない。

 第1作の撮影後、水谷は映画監督を続けることをいとも簡単に宣言した。そして、実行し続けている。人間を演じる面白さとはまた別の感触をつかんだのだろう。観客にとっては、チャンスである。水谷の監督作品には彼を知るキーワードにあふれているからだ。それを見つける喜びがある。

 『太陽とボレロ』をどう楽しむか。楽しめるのか。監督・水谷豊は観客の「参加」を求めている。ただ眺めて感動を欲しがるだけではいけない。気鋭の指揮者・西本智実率いるイルミナート・フィルハーモニー・オーケストラの演奏に浸りつつ、人間ドラマという「管弦楽」の奏者にぜひなっていただきたい。

 6月3日(金)全国ロードショー
原題:太陽とボレロ / 製作年:2022年 / 製作国:日本 / 上映時間:133分 / 配給:東映 / 監督・脚本:水谷豊 / 出演:檀れい、石丸幹二、森マリア、町田啓太、田口浩正、永岡佑、梅舟惟永、田中要次、木越明、高瀬哲朗、藤吉久美子、小市慢太郎、カンニング竹山、HideboH、渋谷謙人、松金よね子、六平直政、山中崇史、檀ふみ、河相我聞、原田龍二、水谷豊
公式サイトはこちら
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文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


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