特集・コラム

映画のとびら

2022年10月27日

犯罪都市 THE ROUNDUP|映画のとびら #212

#212
犯罪都市 THE ROUNDUP
2022年11月3日公開


©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION
『犯罪都市 THE ROUNDUP』レビュー
マ・ドンソクに吹っ飛ばされたい!

 韓国で1,200万人を超える観客動員を果たしたスリリングな刑事アクション。『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)、『悪人伝』(2019)、『エターナルズ』(2021)の人気俳優マ・ドンソクが正義感あふれる豪腕刑事役で主演を務めるほか、映画のプロデュースも兼任。敵役はテレビドラマ『私の解放日誌』(2022)のソン・ソック。監督は、これが長編映画デビュー作となるイ・サンヨン。

 2008年、韓国では悪人どもの海外逃亡が続いていた。そんなある日、衿川(クムチョン)署の強行犯係に勤務する刑事マ・ソクト(マ・ドンソク)は、班長のチョン・イルマン(チェ・グィファ)とベトナムへ容疑者の引き受けに向かう。しかし、その容疑者が何か隠していると気づいたマ・ソクトは、周囲の反対を押し切って独自に捜査を開始。やがて、大企業の御曹司誘拐を首謀する極悪人カン・ヘサン(ソン・ソック)の存在が浮上。その動きを封じようとカン・ヘサンの痕跡をたどるが、一方で大企業のトップが放った刺客もベトナムに乗り込んできていたのだった。

 同じマ・ドンソク演じる刑事マ・ソクトが登場する『犯罪都市』(2017)の続編に該当する作品だが、前作を見ていなくても全く問題なし。一個の刑事ドラマとして独立した物語になっており、何よりマ・ドンソクという俳優のキャラクターひとつで牽引している作品でもあるからだ。

 体重100kg超えの体躯(たいく)と強面の容貌。普通に立っていると、刑事というより刑事に追われる側の人間と思われてしまいがちなマ・ドンソクだが、一旦、相好を崩すと、これが驚くほどチャーミング。その愛嬌と剛力の二刀流で、あっという間に観客を懐に引き込み、味方として抱き込んでしまう。加えて、マ・ソクトという正義漢の役が重なることで、いよいよ頼もしく輝き、そこへ悪人どもの凶行をぶつけたあかつきには、いとも簡単に勧善懲悪の構図を成立させてしまうのだ。痛快とはこのこと。

 信じがたい胸の厚みは、まるでボディビルダー時代のアーノルド・シュワルツェネッガー、ひと昔前ならイタリア映画界でヘラクレス役を我が物にしていたスティーヴ・リーヴスを連想させるだろうか。その巨体から放たれる鉄拳の威力は例によってすさまじく、一撃で相手を吹っ飛ばす。本当に吹っ飛んでいる。どう考えても死んでいるのではないかと思われる怒濤(どとう)のパンチ力なのだが、血は流れても、そのアクションに陰湿さは遠く、むしろ相手に活を入れているかのような健康性が先に立つ。やはり、マ・ドンソクのキャラクターをにらんでの結果で、今回もバイオレンスというより活劇の味わいが際立った。

 こうなると、敵側が凶悪になればなるほど作品の熱は上がる。ソン・ソック演じるカン・ヘサンはなかなかの卑怯な畜生に仕上がっており、マ・ドンソクにとっても相手に不足はなかった。体型はマ・ドンソクの方が当然、上。しかし、ソン・ソックはベトナムから韓国へと逃げ延び、のらりくらりと捜査網をすり抜け、知力と冷血ぶりをもって大金をせしめようとする。ヒルのように血を吸うタイプの悪漢というべきか。マ・ドンソクは正面突破が身上の熱血漢。その対決を見せるイ・サンヨンの演出も悪くなく、スピーディーかつ無駄なくドラマを展開させた。これが監督デビュー作とはいえ、前作『犯罪都市』で助監督を務めていた人。マ・ドンソク活劇のツボを心得ているのだろう。恐らく、マ・ドンソクもそこを買った。

 韓国での大ヒットを受けて、すでに第3作の製作が進んでいるとのこと。それどころか、今後8本もの続編構想があるとまで発表されている。マ・ドンソクは『ワイルド・スピード』的な商品展開を考えているようだが、事前にこれだけの本数の続編を謳い上げるなど、どちらかというと『スター・ウォーズ』である。古い銀河ではなく、少し前の韓国を舞台に、マ・ソクト伝説はこれからもつむがれようとしている。アントニオ猪木に入魂をせがんだプロレス・ファンのように、今後、マ・ドンソクにも一発、活を入れてほしいとせがむ観客も現れるかもしれない。生身は危険だが、まずは映画で存分に吹っ飛んでいただきたい。

 11月3日(木・祝)日本公開
原題:犯罪都市2 / 製作年:2022年 / 製作国:韓国 / 上映時間:106分 / 配給:HIAN / 監督:イ・サンヨン / 出演:マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・ジファン、ホ・ドンウォン、ハジュン、チョン・ジェグァン
公式サイトはこちら
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文/賀来タクト(かく・たくと)
1966年生まれ。文筆家。映画、テレビ、舞台を中心に取材・執筆・編集活動、および音楽公演の企画、講演活動も行う。現在『キネマ旬報』にて映画音楽コラム『映画音楽を聴かない日なんてない』を隔号連載中。

 


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